今回紹介するのは、Netflixで配信中の『ブラック・ミラー』シーズン7第6話「宇宙船カリスター号 インフィニティの中へ」。これはシーズン4第1話の続編エピソードです。
すべて説明しているので、全ネタバレになります。
まずは前作「宇宙船カリスター号」をおさらい
天才プログラマーのロバート・デイリーは、人気オンラインゲーム「インフィニティ」の開発者。しかし現実では孤独で、社内でも軽んじられていました。彼はそのストレスを、自宅サーバーで構築した「スタートレック風」ゲーム世界にぶつけます。
そこでは職場の同僚たちのDNAをこっそり採取してクローン化。ゲーム内で意識を持つ彼らを船員として従え、自分が絶対的な船長となる「神プレイ」を楽しむのです。
しかし、新たに会社に入ってきたナネット・コールがクローンとして連れてこられたことで状況は一変。彼女はすぐに現実を見抜き、クルーたちとともに反乱を起こします。彼らはサーバーの抜け穴を見つけ、現実のオンライン世界へと脱出を成功させました。
今回のエピソード「インフィニティの中へ」
続編の舞台は、前回クローンたちが解放された後の「インフィニティ」。数年が経ち、デジタル世界で自由を手にしたはずの彼らも、新たな問題に直面しています。ナネット・コールは船長となり仲間と宇宙を漂っていましたが、そこには「死のリスク」が存在することが発覚。生き延びるために他プレイヤーのクレジットを奪った結果、狙われる立場に。
一方、現実世界ではCEOウォルトンがゲーム内クローンの存在を隠すため、プレイヤーたちを使ってクルーたちの抹殺を企てます。調査を進めていた現実のナネットは交通事故で昏睡状態に。その間にゲーム内はパニックに陥ります。
事態を打開すべく、クルーはゲーム中枢「ハート・オブ・インフィニティ」にいる「ボブ」という存在に接触。これは、かつてのデイリーのコピーでした。ボブは「昏睡中のナネットに意識を戻せば全員助かる」と提案しますが、実際は彼女を永遠に支配下に置くつもりだったことが判明します。
ナネットはボブの陰謀に気づき、システム崩壊寸前の中で自らの意識を現実へと転送。目を覚ました彼女の中には、クルー全員の意識が同居していました。現実では違法クローン問題が明るみに出て、ウォルトンは逮捕され、物語は新たな形の「解放」と「共生」を迎えて幕を閉じます。
私の感想 今回のブラック・ミラーのテーマは「意識とは何か?」
シーズン7全体を通しても、仮想現実やデジタル意識がテーマのエピソードが多かった気がします。今回も頭に小さな装置をつけて仮想空間に入り込む設定でしたね。
DNAから作られたデジタルクローンが、自分の記憶や感情を持っていて、もはや本人と区別がつかない存在になる。これ、怖いけどすごくリアルに感じました。現実世界にも自分はいるけれど、仮想空間にもう1人の自分がいるという二重構造。しかもその「もう1人」にも苦しみや愛情があるのです。
これは私たちの世界にも起こり得る?
ふと考えると、今自分が生きているこの世界も、実は誰かに作られた仮想空間かもしれない…なんて思ってしまいます。量子物理学などでも議論されていますが、私たちの意識や現実というのは、案外システムの一部なのかもしれません。
そして、人間がどんどんAIを発展させていく中で、いつか「ゲームの中に世界を再現する」ことが可能になるかもしれない。そんな未来の入口に、もう私たちは足を踏み入れてるのかもしれませんね。
まとめ
「宇宙船カリスター号 インフィニティの中へ」は、前作を観ていないとやや難解ですが、テーマは非常に普遍的です。「自分とは何か」「意識とは」「仮想空間で生きる意味」…SFの装いでありながら、とても哲学的な問いを投げかけてきます。
前作を観たことがある方はもちろん、仮想現実やAI、量子論に少しでも興味がある人なら、きっと考えさせられる1本だと思います。
そして…私たち自身が、いつか神のように「世界を作る側」になる日が来るのかもしれませんね。