『ブラックミラー シーズン7 』5話 「ユーロジー」/写真の中の過去に入り込み、向き合う人生の後悔

Netflixで配信されている『ブラック・ミラー』シーズン7。
その第5話「ユーロジー」は、静かで深い感情がじんわり響いてくるエピソードでした。

ブラックミラーシーズン7 5話「ユーロジー」

画像はイメージです。

あらすじ(前半・ネタバレ少なめ)

一人暮らしをしている初老の男性・フィリップ。
ある日、昔の恋人キャロルが亡くなったという連絡が届きます。電話をかけてきたのは、遺族が契約した追悼サービス会社「ユーロジー社」。

「思い出の提供をお願いします」と案内され、数日後、ドローンで謎の装置キットが届きます。

彼に届いたのは、不思議な装置の入ったキット。
オセロのコマのような円盤が喋り出し、ガイドAIの案内で「記憶の中に入り込む旅」が始まります。

このテクノロジーでは、写真や記憶の中をまるで立体的な世界のように歩くことができ、
フィリップはキャロルとの過去を辿ることになります。
…ただ、彼にはひとつ、思い出せないことがありました。

あらすじ(後半・物語の核へ)

フィリップの記憶からは、なぜかキャロルの顔が消えてしまっています。
彼女の顔写真は自分で穴を開けたり、塗りつぶしてわかりません。
過去の記憶をたどる装置の中で、彼は顔の輪郭が抜けた不気味な世界をさまよいます。

ガイドAIは、記憶を掘り起こしながら、かつての二人の関係に潜むある事実を明かしていきます。
やがてフィリップは、ある古い写真を手がかりに、一通の手紙を発見します。
そこには、キャロルが最後に伝えたかった本当の気持ちが書かれていました。
その事実を知ったとき、フィリップは長年抱えてきた誤解と後悔に、ようやく向き合うことになります。

感想 誰にでもある「別れ」の記憶と、取り返せない過去

静かな物語でしたが、心に残るものがありました。
主人公のフィリップは「彼女に捨てられた」と思い込んで生きてきたけど、
演奏テープや写真は捨てずにずっと持っていた。
忘れようとしても、完全には消せなかったんでしょうね。

私自身も、若い頃の昔の恋人とのことを思い出しました。
10代~20代前半の4年間って、今思えばすごく長く感じる。
なんで別れたんだっけ…? お互い「相手が離れていった」と思ってるあたりも、このドラマの2人に少し重なりました。

テクノロジーと「思い出」の未来

ドラマに出てくる「ユーロジー社」の技術は、写真の中に立体的に入り込み、過去を再体験できるというもの。
現実にも、VRや3Dスキャンの進化でもうすぐ実現しそうな気がしてきます。

でも結局、テクノロジーがいくら進んでも、
過去をどう受け入れるか、許すか、許されるか、そういった「人間の感情」はAIでは処理できないんだと思います。

まとめ

「ユーロジー」は、派手な演出や驚きのどんでん返しがあるわけではないですが、
しずかに、でも確実に心に残るエピソードでした。

誰にでもある「後悔」や「すれ違い」をテーマにしながら、
最後には少しだけ癒しを与えてくれる、そんな不思議な物語です。

過去の誰かに「ちゃんと向き合うことができなかった」経験がある人なら、
どこかフィリップに自分を重ねてしまうと思います。

派手なSFではなく、心にそっと触れる「記憶と後悔の物語」。
ぜひ観てほしい1話です。