
1. はじめに
Netflixで「STARTUP スタートアップ」を観ました。似たタイトルで「スタートアップ:夢の扉」という韓国ドラマもあります。韓国ドラマはタイトル通りの爽やかな起業ストーリーなのですが、今回観たアメリカ版スタートアップも起業の話ではあるものの、クライムサスペンス色が強い異色作です。
タイトルの爽やかさとは裏腹に、ギャング・FBI・マフィアが入り乱れるハードな展開が続きます。たまたま観始めたのですが、あまりの面白さに一気見してしまいました。
2. あらすじ(ネタバレなし)
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原題 | StartUp |
| 配信 | Netflix(元はSony Crackle) |
| 放送 | シーズン1:2016年 / シーズン2:2017年 / シーズン3:2018年 |
| 各シーズン | 全10話 |
| 舞台 | フロリダ州マイアミ |
シーズン1 出会いと起業
舞台はギャングの抗争と金融犯罪が絶えないフロリダ州マイアミ。
銀行員のニック・タルマンは、父親から預かった220万ドルが実は汚いお金だったことを知ります。その資金を、たまたま融資を求めてきたキューバ系の天才プログラマー・イジー(イザベル)・モラレスに投資してしまったことから、物語が動き出します。
イジーは5年以上の歳月をかけて、銀行口座を持てない貧しい人々でも携帯電話一台で使える革命的な暗号通貨「ジェンコイン」を開発していました。その資金を巡り、ニックはハイチ系ギャング組織LH7のボス、ロナルド・デイシーとも関わることになります。
生まれも育ちも目的もまったく異なる三人が、ジェンコインを世に出すために手を組むことに。しかし彼らの前には、腐敗したFBI捜査官フィル・ラスクの影が忍び寄ります。
シーズン2 成長と試練
ジェンコインは軌道に乗り始めますが、三人の関係は新たな緊張をはらんでいきます。ロシア系マフィアや外部の投資家が絡んでくるなかで、イジーたちはジェンコインの技術を応用した匿名通信ネットワーク「ArakNet(アラックネット)」の開発へと舵を切ります。
ダークウェブ上のインフラとして機能するアラックネットは爆発的なユーザー数を集める一方で、犯罪組織にも悪用されはじめます。三人それぞれが私生活でも大切なものを失いながら、それでも前へ進もうともがく姿が描かれます。
シーズン3 最大の敵との対決
アラックネットはユーザー6000万人を超える巨大サービスに成長。しかし赤字経営で資金繰りは悪化し、会社は売却の危機に瀕します。
そこへ登場するのが、NSA(アメリカ国家安全保障局)のエージェント、レベッカ・ストラウド。アラックネットがテロ活動の温床になっているとして、協力を迫ります。「協力しなければ三人の黒い過去をすべてさらす」という脅しに、ニック・イジー・ロナルドは追い詰められていきます。
これまでのギャングやマフィアとは次元の違う相手、アメリカ政府という巨大な闇組織との戦いに、三人はどう立ち向かうのか。
3. 感想
ポイント整理
- 普段の生活では絶対に交わらない三人(ハイチ系ギャングのボス・銀行員・キューバ系移民IT女子)が一緒に会社を立ち上げる、という設定が斬新
- 暗号通貨からダークネットの構築まで、スタートアップドラマとしても本格的で見ごたえがある
- 主人公の一人、ロナルド・デイシーが個人的にドラマ全体で一番好きなキャラクター
- 「THE OC」「SHERLOCK」などで知られる有名俳優たちが脇を固める豪華キャスト
- シーズン3がモヤモヤ感の残るバッドエンドで終わっており、続きが非常に気になる
三人の主人公について
このドラマの最大の魅力は、三人の主人公が持つ圧倒的なキャラクターの多様性と、そのぶつかり合いです。
ロナルド・デイシー(ハイチ系ギャングのボス)
個人的にこのドラマで一番好きなキャラクターです。ハイチ系ギャング組織LH7のリーダーとして人も殺してきた過去を持ちながら、三人の中でおそらく最も人格者です。常に冷静で、仁義を大切にし、筋が通っている。元ギャングがIT起業の共同CEOになっていくギャップが面白く、いざというときの銃の扱いや敵を倒すシーンもカッコいい。こういう「ダークな過去を持つ善人」というキャラクターは本当にドラマを引き締めます。
イジー(イザベル)・モラレス(キューバ系移民のIT天才)
貧しいキューバ系移民家庭で育ち、7年以上をジェンコインの開発に捧げてきた天才プログラマー。「銀行口座を持てない世界中の貧しい人々を救いたい」という純粋な理想を持ちながら、次第に現実の泥臭い世界に飲み込まれていく姿が見どころです。
ニック・タルマン(銀行員)
三人の中では最も「普通の人間」として描かれていますが、物語が進むにつれて少しずつ壊れていく様子が怖いくらいリアルです。
スタートアップドラマとしての面白さ
タイトルに「スタートアップ」とある通り、起業ドラマとしても本格的に作り込まれています。暗号通貨(ジェンコイン)の仕組み、ダークウェブ対応の匿名ネットワーク(アラックネット)の構想、資金調達の交渉、投資家との駆け引き、こうした要素が犯罪サスペンスの文脈の中にしっかり組み込まれていて、技術的な興奮も味わえます。
制作スタッフは脚本執筆にあたって仮想通貨などの知識を得るために約6ヶ月間勉強したとのことで、そのリアリティへのこだわりが随所に感じられます。
4. 調べてわかったこと キャスト・制作背景
ステラ役の女優さんは日本人ハーフだった
ドラマ中盤から登場する暗号化の天才、ステラ・ナムラ。アジア系のとても美しい女優さんだなと思ったら、やはりそうでした。演じているのはレイナ・ハーデスティ(Reina Hardesty)さんで、母親が日本人翻訳家の井隼眞奈子さん、父親がアメリカ人というハーフの女優さんです。「ザ・フラッシュ」などにも出演しています。「ナムラ」という苗字も日系を意識した役名だったんですね。
豪華すぎる出演陣
- アダム・ブロディ(ニック役):「The OC」のセス・コーエン役で世界的にブレイクした俳優
- エディ・ガテギ(ロナルド役):「ブラックリスト」「トワイライト」シリーズ出演
- オトマラ・マレロ(イジー役):本作でブレイクしたキューバ系女優
- マーティン・フリーマン(FBI捜査官フィル・ラスク役):「SHERLOCK」のワトソン役、「ホビット」主演で知られる英国を代表する俳優。本作では腐敗した自己中なFBI捜査官を怪演
- ロン・パールマン(ウェス役):「サンズ・オブ・アナーキー」などで知られる個性派俳優。シーズン2から登場する謎の投資家役
- ミラ・ソルヴィノ(NSAエージェント役):アカデミー賞助演女優賞受賞女優。シーズン3から登場
シーズン3のバッドエンドと打ち切りについて
シーズン3は2018年11月に配信されましたが、話が途中で終わったような後味の悪い結末で幕を閉じます。続編が作られることなく現在に至っており、事実上の打ち切り状態です。
背景には「大人の事情」があります。このドラマはNetflixのオリジナル作品ではなく、もともとソニーが運営するストリーミングサービス「Crackle」で制作・配信されていました。ところがソニーがCrackle事業の経営権を手放したことで、「スタートアップ」の権利関係が宙に浮いてしまったのです。
2021年にNetflixで配信が開始されると再び火がつき、アメリカで28日間にわたってトップ10にランクインするほど人気を集めました。シーズン4の制作が期待されましたが、残念ながら現時点では正式なアナウンスはありません。
つまらないから打ち切りになったわけでは決してなく、権利問題というまさに「大人の事情」。これだけの作品がそのまま終わってしまうのは本当にもったいないと思います。
もう数年が経っているので、逆にその年月を物語に活かした形で続編を作ってほしい~そう思っているファンは世界中にいるはずです。
5. こんな人におすすめ
このドラマが刺さりそうな人を挙げてみます。
- 「ブレイキング・バッド」「オザーク」のような、普通の人が犯罪に巻き込まれてじわじわ堕ちていく系のドラマが好きな人
- ビジネスや起業に興味があって、クライムサスペンスも楽しめる人
- 仮想通貨・ダークウェブ・ハッキングといったIT系のテーマに興味がある人
- キャラクターの多様性(人種・バックグラウンド・価値観)が豊かなドラマを求めている人
- 「善悪の境界が曖昧な人物」が好きな人(ロナルドのような)
逆に、スッキリしたハッピーエンドが好きな方にはシーズン3のラストが辛いかもしれません。ただ、それでも「観てよかった」と思える作品だと断言できます。
一気見注意のドラマです。時間があるときにどうぞ。