映画「ファースト・マン」感想レビュー|アポロ11号で人類初の月面着陸を成し遂げた男の実話

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映画「ファースト・マン」

先日「アポロ13」を観たばかりでしたが、続けて「ファースト・マン」も観てみました。どちらもアポロ計画を描いた実話映画で、訓練の過酷さや家族の葛藤といった共通点が多く、記憶がごっちゃになりそうになりましたが、この2作品はまったく違う視点で作られていることが観てよくわかりました。


作品情報

項目 内容
原題 First Man
製作年 2018年(アメリカ)
日本公開 2019年2月8日
上映時間 141分
監督 デイミアン・チャゼル(『ラ・ラ・ランド』)
脚本 ジョシュ・シンガー
製作総指揮 スティーブン・スピルバーグ
主演 ライアン・ゴズリング(ニール・アームストロング役)
共演 クレア・フォイ、ジェイソン・クラーク、カイル・チャンドラー、コリー・ストール
受賞 第91回アカデミー賞 視覚効果賞受賞

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あらすじ

娘の死と宇宙への執着

テストパイロットとして活躍していたニール・アームストロングは、幼い娘カレンを脳腫瘍で亡くしてしまう。2歳という早すぎる死。葬儀の場でも表情ひとつ変えなかったニールだったが、その夜、一人で部屋にこもり嗚咽する姿が描かれる。その日を境に、彼はNASAのジェミニ計画への応募を決意する。

悲しみから逃げるように、あるいは何かを取り戻すように。月を目指すことへの執着は、そこから始まった。

ジェミニ計画と次々と散る仲間たち

NASAの宇宙飛行士に選ばれたニールは、妻ジャネットと息子たちを連れてヒューストンへ移る。過酷な訓練の日々が始まるが、同時に事故も相次いだ。訓練機の墜落事故で仲間が命を落とし、ジェミニ8号での任務中には宇宙船が制御不能な回転に陥り、ニール自身も死の淵を経験する。

ソ連との宇宙開発競争が激化する中、アメリカのNASAは失敗と犠牲を重ねながらも月を目指し続けた。

アポロ1号の悲劇

1967年1月、ニールの親しい友人エド・ホワイトがアポロ1号のクルーに選ばれた。ところが、打ち上げに向けた地上テスト中に司令船内で火災が発生。高濃度の純粋酸素で満たされていた船内は一瞬で炎に包まれ、脱出もままならない構造だったため、エド・ホワイト、ガス・グリソム、ロジャー・チャフィーの3名が殉職した。

電話でその報せを受けたニールは、顔色ひとつ変えず静かに受話器を置いた。しかしその手は、知らぬ間に握りしめたグラスを割り、血を流していた。感情を内に秘めた男の、精一杯の悲しみの表し方だった。

アポロ11号、月へ

幾多の犠牲と試練を経て、ニールはアポロ11号の船長に任命される。出発前夜、妻ジャネットは「戻れないかもしれないと子供たちにちゃんと話して」と怒りをぶつけた。長男に「帰ってこられるの?」と問われたニールは「ミッションを信頼している」とだけ答えた。

1969年7月。アポロ11号は月へと旅立った。そして人類史上初めて、ニール・アームストロングが月面に足を踏み出した。


感想

アポロ13との違い|英雄譚ではなく、一人の人間の物語

「アポロ13」と続けて観ると、両作品の描き方の違いがよくわかります。アポロ13は「どうやって全員を生還させるか」という問題解決のスリルが軸で、NASAチーム全体の群像劇として描かれていました。一方、ファースト・マンはあくまでニール・アームストロング個人の視点で語られる伝記映画です。

訓練の描写や家族の苦悩といった要素は確かに似ていますが、アポロ13が「チームの勝利」を描いた作品だとすれば、ファースト・マンは「一人の人間がどうやって月面に立つに至ったか」という内面の旅を描いた作品です。派手な盛り上がりはなく、全体的に静かで暗いトーンですが、それがかえって実話としてのリアリティを高めていると感じました。

月面の無音シーン、その静寂の意味

この映画でもっとも印象的だったのが、月面に降り立つシーンです。宇宙の無音の世界をそのまま表現するかのように、音楽も効果音も消え、完全な静寂の中でニールが月面を歩く姿が映し出されます。

地球での喧騒、事故の爆音、家族の怒鳴り声、友人の死。そういったすべてから切り離された先に、この静寂があるような感覚でした。

アポロ1号の犠牲者たちのこと

作中で描かれるアポロ1号の事故は、宇宙開発の歴史の中でも特に悲惨な出来事です。打ち上げ前の地上テスト中に司令船内で火災が発生し、ガス・グリソム、エド・ホワイト、ロジャー・チャフィーの3名が亡くなりました。高濃度酸素の環境では一瞬で火に包まれ、脱出も困難な構造だったといいます。

この映画を観て改めて思ったのは、宇宙開発の偉業というのは犠牲の上に成り立っているという事実です。月面着陸の成功も、こうした命をかけた先人たちの積み重ねがあってこそ。将来、火星に有人着陸が実現する日が来るとしたら、そのときもきっと誰かの犠牲や苦難がその土台になっているのだろうと感じました。

50年前の技術でやり遂げたということ

いまの技術でも月面着陸は容易ではない話を聞くことがあります。それなのに、携帯電話すら存在しなかった1960年代に、あの小さな宇宙船で月まで往復してしまったことが本当に信じられません。

映画の中でも描かれますが、当時の宇宙船はネジの軋む音や振動が生々しく、明らかに「この船で大丈夫なのか」という不安を感じさせる代物です。いくら訓練を積んでも、月面という未知の環境での着陸は誰も経験したことがないわけで、その場で初めてやり遂げた宇宙飛行士たちのプレッシャーは想像を絶するものだったと思います。

アポロ13と比べると?

正直に言うと、純粋な「面白さ」でいえばアポロ13の方が上でした。次から次へとトラブルが起き、チーム全体で解決していくカタルシスは、エンターテインメントとして非常によくできています。

ファースト・マンは淡々としていて、地味な部分も多い。けれど、観終わったあとの余韻はこちらの方が深いかもしれません。「月面を踏んだ最初の人間」という偉業の裏に、これほどの悲しみと葛藤と覚悟があったのかと気づかせてくれる作品でした。宇宙開発の歴史に興味がある方には、アポロ13とセットでぜひ観てほしい一本です。


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